再就職手当はもらわない方がいい?その理由とは?メリット・デメリット徹底解説

50代の再就職

転職や再就職は、「年収ダウン」「短期離職リスク」「老後資金への影響」など、多くの不安がつきまといます。そんな中、「再就職手当」は、一括で数十万円が支給される魅力的な仕組みとして知られています。

しかし一方で、「再就職手当はもらわない方がいい」という情報を目にすることもあります。果たして、それは事実なのでしょうか?

結論としては、条件次第では受給することで逆に損をするケースや、将来の選択肢を狭めてしまうリスクも確かに存在しています。ただし、もらわないと損してしまうケースもありますし、受給するメリットの方が大きいことの方がほとんどです。そのため、安易に「もらわない」という判断はすべきではないでしょう。

この記事では、「再就職手当」をもらう方がいいのか?もらわない方がいいのか?という視点で、制度やメリット・デメリットを徹底解説します。自分にとって本当にこの手当が必要か、正しい判断をして、後悔しないキャリア選択のためにも、参考にしてください。

  1. 再就職手当とは何か?仕組みと基本知識
    1. 再就職手当の支給額と計算方法
    2. 50代が特に気をつけるべきポイント
  2. 再就職手当をもらわない方がいいと言われる理由とは?
    1. 理由1. 失業保険(基本手当)より金額が少なくなるケースがあるから
    2. 理由2.一度受け取ると3年間は再受給不可だから
    3. 理由3.次の就職先を短期で離職する場合にはデメリットが増えるから
    4. 理由4.再就職手当の受給条件が厳しくて審査落ちの可能性もあるから
    5. 理由5.就職先や働き方の選択肢を狭める可能性があるから
    6. Q.再就職先の収入が下がる場合は損をするのは本当?
    7. Q.短期離職すると再就職手当の返還義務が生じるって本当?
    8. Q.税金・社会保険料の負担が増える可能性はあるの?
  3. 再就職手当をもらったほうがよいケースとは?
    1. 転職先の給与が前職より高い場合
    2. 一年以上の長期雇用が見込める場合
    3. 住宅ローンや教育費など固定支出が多い場合
    4. 新しい環境への不安を軽減したい場合
    5. 家族への安心材料を用意したい場合
  4. ケース別おすすめプラン|受給する?しない?の判断基準
  5. 再就職手当と失業保険、どちらを選ぶべきか?最適な判断基準を解説
    1. 再就職手当と失業保険の違いを正しく理解しよう
    2. こんな人は再就職手当を選ぶべき!おすすめケース
    3. じっくり転職活動をしたい人は失業保険継続が安心
    4. 判断基準は「収入の安定性」と「ライフプラン」
  6. 再就職手当をもらうための手続き概要
    1. 再就職手当申請の流れ
    2. 手続きで特に注意したいポイント
  7. 再就職手当の注意点|利用前に知っておくべきこと
  8. まとめ:再就職手当は正しい知識を基に判断をしよう
  9. 【50代向け】再就職手当に関するよくある質問(Q&A)

再就職手当とは何か?仕組みと基本知識

再就職手当とは、失業手当(正式名称:雇用保険の基本手当)の受給資格がある人が、早期に安定した職業に就いた場合にもらえる給付金です。簡単に言えば、「残りの失業手当を一部まとめて受け取れるボーナス」のような制度です。

再就職手当のメリットと役立つ場面
  • まとまった資金を得られるため、転職に伴う引っ越しや新生活準備資金に充てやすい
  • 早期の再就職で職歴のブランクを最小限にできる
  • 再就職後6か月以上働き賃金が下がった場合、「就業促進定着手当」も受け取れる可能性がある

政府が設けた制度で、「早期の再就職を促進し、生活の安定を支援する」ことを目的としています。特に50代での再就職は年収減のリスクもあるため、この制度の仕組みを正しく理解し、損をしない判断が不可欠です。

再就職手当の支給額と計算方法

再就職手当は「残っている失業手当の一部」をまとめて支給する仕組みです。具体的な計算方法は以下の通りです。

支給額 = 支給残日数 × 支給率(60%または70%)× 基本手当日額

支給率のルール

支給額の目安は、残っている失業給付の60〜70%早く就職するほど支給率が高くなり、受け取れる金額が増える仕組みです。

残日数割合支給率
3分の2以上70%
3分の1以上60%

また、基本手当日額は、離職前6か月間の賃金総額180で割った金額をベースに計算されます。50代の管理職・専門職の場合、もともとの賃金水準が高いため、1日あたりの支給額も高くなる傾向があり、まとまった金額を受け取れるケースが多くなります。

【具体例】支給額のイメージ
  • 基本手当日額:7,000円
  • 所定給付日数:150日
  • 再就職時の残日数:100日(3分の2以上残し)

計算:7,000円 × 100日 × 70% = 490,000円(概算)

再就職手当は一括支給されるため、まとまった資金が手に入るのが大きな特徴です。再就職の準備費用や生活資金として非常に助かります。

受給するための条件

以下のすべての条件を満たすことが必要です。

  1. 7日間の待機期間が終了していること
  2. 就職日前日に支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  3. 1年以上の継続雇用が見込まれること(正社員、契約社員、派遣も可)
  4. 離職した企業や関連会社への再就職でないこと
  5. 雇用保険に加入する雇用形態であること(週20時間以上など)
  6. 過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受け取っていないこと
  7. 受給資格決定前に内定を得ていないこと

参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~|厚生労働省

50代が特に気をつけるべきポイント

50代は以下のようなケースで再就職手当がもらえない、もしくは損をする可能性があります。

  • 契約社員・派遣社員で1年未満の雇用契約
  • 業務委託契約や個人事業主扱いの再就職(雇用保険対象外)
  • 関連企業に就職してしまい支給対象外になる
  • 過去3年以内に再就職手当を受給していた場合

特に「雇用保険に入らない働き方」や「再就職先の資本関係」を見落とすと、大きな損失につながります。

再就職手当をもらわない方がいいと言われる理由とは?

50代の再就職活動は、金銭的にも精神的にも大きな負担がかかるからこそ、この手当を正しく活用すれば、転職後の不安軽減につながります。ところが「もらわない方がいい」という声があるのも事実です。ここでは「なぜそう言われるのか?」具体的な理由と背景を徹底解説します。

理由1. 失業保険(基本手当)より金額が少なくなるケースがあるから

再就職手当は、失業保険の支給残日数に応じて60%~70%の金額が一括支給されます。しかし、計算次第では「失業保険を満額受給した方が得だった」と感じるケースもあります。

項目失業保険を満額受給再就職手当を受給
総額100万円60万円~70万円程度
メリット安定した生活保障一括でもらえる資金
デメリット就職活動が長期化金額が減る可能性

特に再就職後の給与が低い場合、「生活が苦しい」「手当を急いでもらう必要はなかった」という後悔につながるリスクがあります。

高橋
高橋

50代の再就職・転職は厳しいという認識や、再就職手当は早く就職したほうが多くもらえるという情報から、「早く決めなければ」と焦ってしまう人は少なくありません。そうして給与面で妥協し、急いで就職先を決めた後に冷静になって振り返ると、「失業手当を受け取りながら、もう少しじっくり転職活動を続ければよかった」と後悔してしまうケースもあるのです。

ただし、再就職すれば、新しい職場で給与収入も得ていることとなります。そのため、再就職手当と給与収入を合算すると、失業手当をすべて受け取ってから就職するより収入が多くなる可能性があります。目先の手当額のみを比較して「損」と考えてしまわないように注意が必要です。

理由2.一度受け取ると3年間は再受給不可だから

再就職手当を受給したあと、3年以内に再度同じ手当を受け取ることはできない、というルールがあります。これは雇用保険法で定められており、俗に「3年ルール」と呼ばれます。何度も短期間に繰り返し再就職手当を受け取ることを防ぐための制限です。

そのため次の就職先をすぐにやめてしまう可能性がある場合には、次の再就職時には手当を受け取ることができないことをあらかじめ理解した上で、給付を受ける必要があります。

ただ、通常の失業手当(基本手当)を受け取る権利がなくなるわけではありません。再就職手当を受け取ったあと、雇用保険の被保険者期間が一定以上あれば、通常どおり失業手当を請求できます。たとえば、会社都合退職なら6か月以上、自己都合退職なら12か月以上の被保険者期間を満たせば、あらためて受給資格が生じます。

理由3.次の就職先を短期で離職する場合にはデメリットが増えるから

再就職手当を受け取ったあと、短い期間で離職してしまうと想像以上に大きなデメリットを被る可能性があります。たとえば「わずか数か月で辞めた結果、新しい失業保険が受け取れず、次の就職先も決まらなくて困った」という事例は少なくありません。なぜ短期離職がリスクとなるのか、詳しく解説します。

新たな失業給付を受け取れない可能性

短期離職をすると、次に失業したときの基本手当を受給するために必要な「雇用保険の被保険者期間」を満たせないケースが生じます。自己都合退職の場合は原則として12か月、会社都合退職の場合でも6か月以上の被保険者期間が必要です。わずか数週間や数か月の在職しかなかった場合、この要件をクリアできず、再び失業しても受給資格が発生しない恐れがあります。

失業手当の“残日数”を有効に使えない

再就職手当は「残っている失業手当の一部(60~70%)をまとめて先取りする制度」です。そのため、就職が決まった時点で、失業手当の残りの日数分については「既に受給した」扱いになります。もし早期に辞めてしまうと、本来ならじっくり受けられたはずの失業手当を、十分に活用できないまま終了してしまうかもしれません。

高橋
高橋

再就職手当を優先して早めに就職しても、短期間で離職してしまうと、失業手当の残日数を使えないうえに、次の就職までの失業保険や就職が決まった際の再就職手当を受け取れないなどデメリットが大きくなるのです。

救済措置があっても利用できない場合が多い

短期離職をしても、受給期間内であれば残りの失業手当を再度受け取れる場合があります。しかし、再就職後にいったん離職してからハローワークで手続きをするまでの時間や、雇用保険の加入期間が足りているかなど、クリアすべき条件は少なくありません。結果として、実際には救済措置を使えないまま、金銭的に厳しい状況に陥る人も多いのです。

前述のとおり、再就職手当を受け取って短期間で退職すると、3年以内には再度同じ手当をもらえないという制度制限にも引っかかります。もし別の職場で早期就職が決まっても、すぐには再就職手当を再び申請できないため、

  1. 新しい失業給付の受給資格も得られない
  2. 再就職手当もまた使えない
  3. 収入源が乏しくなる

という“三重苦”のような事態に陥りかねません。1年以内の雇用と決まっている場合や、短期離職の可能性がある場合には、再就職手当の受給には慎重な判断が必要です。

理由4.再就職手当の受給条件が厳しくて審査落ちの可能性もあるから

以下の条件をすべて満たさないと、再就職手当は受け取れません。「そのため制度を理解しておかないと、再就職手当を期待していたのにもらえなかった」ということにもなりかねません。

高橋
高橋

もしダメだった場合「期待してがんばって就職活動したのに⋯」と落ち込んでしまうかもしれません。新たなスタートのタイミングでの心理的なマイナスは避けたいですよね。事前の理解や確認は必ず行いましょう。

以下の受給条件をチェックして、自分が対象者なのかをしっかりと確認しておきましょう。

  • 失業保険の残日数が3分の1以上あること
  • 待機期間(7日間)後の就職であること
  • 離職した会社や関連企業ではないこと
  • 1年以上の雇用が確実であること
  • 雇用保険に加入できる職場であること
  • 過去3年以内に再就職手当を受け取っていないこと
  • 受給資格決定前に内定をもらっていないこと
チェック項目判定
支給残日数3分の1以上□YES / □NO
待機期間終了後の就職□YES / □NO
離職企業や関連会社ではない□YES / □NO
1年以上の雇用見込み□YES / □NO
雇用保険に加入□YES / □NO
過去3年以内の受給なし□YES / □NO
内定取得タイミング適正□YES / □NO

理由5.就職先や働き方の選択肢を狭める可能性があるから

再就職手当は、早期に再就職を決めた場合に支給される制度で、魅力的に見える反面、思わぬ落とし穴があります。その代表的なものが「キャリアの選択肢を無意識に狭めるリスク」です。

再就職手当の支給条件が、理想の働き方を制限する

再就職手当を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 1年以上の雇用見込みがあること
  • 雇用保険の被保険者となること(週20時間以上の勤務)
  • 前職の関連会社やグループ企業への再就職は対象外

一見すると当然の条件に思えますが、50代からのキャリア再構築ではこれが大きなハードルになり得ます。

例えば、以下のような柔軟な働き方は対象外となるケースが多くなります。

  • 短期契約社員や派遣社員
  • 週3日勤務や時短勤務のパートタイム
  • フリーランスや自営業として独立する場合
  • 複数の副業を組み合わせた働き方

「もうフルタイム正社員は厳しい」「好きなことを仕事にしたい」という50代の理想の働き方が、支給条件によって狭められるのです。

「もう辞められない」という心理的な縛りが生まれる

再就職手当は、決して少額ではありません。失業手当の最大70%が一括で支給されるため、多くの人が「せっかくもらったのだから頑張らなければ」と感じてしまいます。また短期離職は、今後の失業手当や再就職手当に対して影響してしまいます。それゆえ「もう辞められない」と過度に感じてしまうこともあるのです。

この心理的な縛りには、以下のようなリスクがあります。

  • 手当をもらった手前、すぐに辞めづらくなる
  • 家族から『せっかく手当をもらったのに』と言われ、プレッシャーが増す
  • 自分に合わない仕事でも我慢し続け、メンタル不調を招く

特に50代は、家族の生活費や住宅ローン、老後資金などのプレッシャーを抱えているため、無理を重ねやすい世代です。再就職手当は確かに魅力的な制度ですが、意識しすぎると「働き方の自由を奪われる」「心理的負担が増す」というデメリットも存在すると言えるでしょう。

Q.再就職先の収入が下がる場合は損をするのは本当?

そもそも再就職手当は「残りの失業手当を一部前倒しでまとめて支給する」制度です。本来は、新しい就職先の給与収入と再就職手当を受け取ることで、なるべく早い収入の安定を実現することができるはずのもの。

ところが、再就職先の収入が大きく下がってしまう場合には、「失業手当を満額受け取ったほうが収入的にはメリットがあった」となる可能性があることは事実です。そのため、「失業保険を満額もらったほうが得だったのでは?」と考える人もいるようです。

ただし、新しい仕事の給料が前の職場より低かったとしても、雇用保険には「就業促進定着手当」という制度もあり、減った分を多少なりともカバーできる可能性があります。新しい職場で半年・1年と継続して働けば、給料+再就職手当+就業促進定着手当などを合計したトータルの収入が、結果的に“まるごと失業保険だけ”よりも多くなるケースも珍しくありません。

短期的な収入だけを見れば「損をする」可能性もありますが、正しく制度を理解して、中長期での給料や手当のトータルを考えることが大切です。

就業促進定着手当とは?

就業促進定着手当は、再就職手当をもらった人が、新しい職場で6か月以上働き、前の職場より給料が下がった場合に、その差額の一部を補助してくれる制度です。具体的な金額は、人それぞれの給料差に応じて変わりますが、前の職場の給料と比べて下がっている分を計算し、数万円から十数万円程度になることもあります。
参考:就業促進定着手当申請案内リーフレット|厚生労働省

Q.短期離職すると再就職手当の返還義務が生じるって本当?

再就職手当は、早く新しい仕事に就いた人への支援金です。「1年以上働く見込み」で入社したなら、たとえ短期で辞めたとしても、すぐに返還義務が生じるわけではありません。ただし、最初から雇用期間が1年未満だったり、前の会社の関連企業に入社したのに隠したりした場合などは、不正受給とみなされ、手当の返還を求められる可能性があります。

さらに、実際は働いていないのに手当をだまし取るケースも同様です。なお、返還が必要になるのは、ウソの書類を出したり、本来の条件を満たさないのに偽って手当をもらったりした場合です。

正しく申請した上で、やむを得ず早期に退職しても、その事実だけで返還義務が発生するわけではないので、必要以上に心配する必要はありません。もし疑問があれば、ハローワークに相談して確認しましょう。

Q.税金・社会保険料の負担が増える可能性はあるの?

再就職手当は一時金として支給されるため、所得扱いにはならず非課税ですので、直接的に税金や社会保険料が増えることはありません。

気にすべき点があるとすれば、再就職後の収入が増加する場合には「健康保険料」や「住民税」の負担が増えることです。

  • 年収が増えたことで社会保険料がアップ
  • 扶養から外れた家族がいる場合、負担増加の可能性
  • 老後の年金受給額にも影響するケース

このように、受け取った後のコスト増加を見落とすと、結果的に「損をした」と感じることもあるかもしれません。

ただし、それは再就職手当を受け取ることによる影響ではありませんので、正しく事実を把握して判断することが大切です。

再就職手当をもらったほうがよいケースとは?

再就職手当は、条件を満たせば非常に大きなメリットをもたらす制度です。ただ、「もらわない方がいいこともある」なんて聞くと、自分はもらっていいのか不安になるかもしれませんね。ここでは「もらったほうがよい」ケースを紹介していきますので、自分が該当するかどうかチェックしてみてください。

転職先の給与が前職より高い場合

再就職後の給与が前職を上回る場合は、迷わず再就職手当の受給を検討すべきです。新たな職場での高い収入と再就職手当の一括支給が重なることで、家計の安定と将来設計の余裕が生まれます。

【具体例:年収比較】
項目前職転職先
月給35万円38万円
年収420万円456万円
再就職手当0円50万円
初年度収入合計420万円506万円

このように、月収アップに加えて50万円の一時金が支給されるため、初年度は約86万円のプラス効果となります。

一年以上の長期雇用が見込める場合

雇用期間が1年以上確定、または見込まれる場合は、安定した収入を得ながら再就職手当も活用できます。

長期雇用の見込みがあれば、以下のようなメリットが得られます。

  • 再就職手当の条件をクリアしやすい
  • 職場定着への安心感が得られる
  • 今後のキャリアプランを描きやすくなる

早期離職リスクが低ければ、まとまった手当を受け取りつつ、新しい職場でのキャリア形成に集中できます。

住宅ローンや教育費など固定支出が多い場合

家計の支出が大きく、収入の安定化が急務な場合は、再就職手当の活用価値がさらに高まります。

支出項目毎月の平均額
住宅ローン・家賃10万円
教育費(子ども2人)8万円
医療費・介護費用3万円
合計21万円

こうした固定費が重い家庭では、再就職手当の一括支給が「経済的な緩衝材」として非常に効果的です。支出増への備えや万一のための蓄えにも使えます。

新しい環境への不安を軽減したい場合

50代の再就職は、環境変化による心理的な負担が大きいものです。再就職手当は、その不安を和らげる「安心材料」になります。

例えば、以下のような初期コストをカバーできます。

  • 交通費や業務に必要な備品購入
  • スーツやPCなど初期投資
  • 最初の数ヶ月間の生活資金の補填

これにより、新しい環境にも前向きに挑戦しやすくなります。

家族への安心材料を用意したい場合

50代の再就職は、家族にも大きな影響を与えるイベントです。特に配偶者や子ども、親の理解と応援は欠かせません。

再就職手当の受給によって、

  • 家族の生活費や教育費の見通しが立つ
  • 「しばらくは経済的に大丈夫」と伝えられる
  • 家族の不安や負担を減らせる

こうした効果により、再出発を家族と一緒に前向きにスタートできるでしょう。

再就職手当は、「もらえるなら必ずもらうべき」と言われるほど価値の高い支援制度です。特に上記のような状況では、遠慮せず申請を進めることで、経済面・精神面の両方で大きな安心感が得られるでしょう。

再就職手当をもらわないほうがいいケース
  • 再就職先が短期契約や試用期間のみで、1年以内に離職する可能性が高い場合
  • 年収・条件が著しく低い再就職先に「手当」が欲しくて焦って就職する場合
  • 職業訓練や資格取得支援を利用してキャリアアップや資格取得を目指したい場合
  • 体調や家庭の事情で、働き続けられる見込みが薄い場合
  • 独立・起業・フリーランスを検討している場合はもらえないことに注意

ケース別おすすめプラン|受給する?しない?の判断基準

再就職手当は、条件を満たせば非常に魅力的な制度ですが、すべての人が必ずしも受給したほうが良いとは限りません。ここでは、読者が自分の状況に合わせて最適な判断ができるよう、典型的なケース別に「受給する」「受給しない」それぞれのおすすめプランを具体的に解説します。

【ケース1】安定した転職先が決まり、収入も確保できる場合

→ 再就職手当の受給を強く推奨します。

  • 新しい職場の収入が十分にあり、1年以上の勤務が見込まれる場合は、再就職手当の受給によって家計の立て直しがスムーズになります。
  • 手当を原資に生活費の備えや教育費、将来の投資に充てられるため、長期的にもメリットが大きいでしょう。

【ケース2】次の仕事の契約期間が不確定、短期の可能性がある場合

再就職手当は慎重に判断

  • 1年未満の雇用契約や短期案件の場合、再就職手当の条件(1年以上の雇用見込み)を満たさず不支給になるリスクがあります。
  • 仮に支給された後でも早期退職になると、再度の失業時に給付制限がかかる恐れも。

【ケース3】高年収求人をじっくり探したい場合

→ 失業保険の受給継続を優先。

  • 50代での転職は年収ダウンのリスクが高いため、条件にこだわって探したい人は再就職手当を焦って受給する必要はありません。
  • 失業保険の給付期間を有効活用し、職業訓練やキャリア相談を受けながら、納得のいく求人をじっくり狙う戦略が得策です。

支給残日数が3分の1を下回る前には決断を。

【ケース4】住宅ローン・教育費など支出負担が大きい場合

→ 再就職手当の積極活用を検討。

主な支出項目月額目安
住宅ローン・家賃10〜15万円
子どもの教育費5〜10万円
介護・医療費3〜5万円
  • このように支出負担が大きい世帯は、まとまった再就職手当を受給することで当面の生活資金を確保しやすくなります。
  • 精神的にも「家計の備え」ができる安心感は大きいでしょう。

【ケース5】副業・起業を視野に入れている場合

→ 再就職手当の申請は慎重に検討。

  • 再就職手当の対象は「1年以上の安定雇用」が前提となるため、副業や起業準備をする場合には制度と相性が良くありません。
  • 就職ではなく個人事業主として独立する場合は対象外です。

【ケース6】再就職先が試用期間後の継続雇用が不透明な場合

→ 失業保険の継続受給を検討。

  • 試用期間終了後に本採用されるか不透明な場合は、焦って再就職手当を申請するよりも、まずは試用期間の結果を見極めることが得策です。
  • 本採用されない場合、再就職手当が無駄になるリスクがあるため、注意しましょう。

試用期間中の雇用契約内容をしっかり確認しましょう。救済措置が受けられる可能性もあるので、事前に把握しておくことがおすすめです。

自身の状況にあわせて判断をしよう!

以下のように、「安定した就職が決まっている」「家計の支出負担が大きい」場合は、積極的に再就職手当を申請すべきです。

一方で、短期就業条件重視の転職独立志向がある場合は、無理に申請せずに他の選択肢を検討することで、将来の選択肢を広げられます。

ケースおすすめプラン
安定した転職決定・収入確保再就職手当を申請する
短期契約・不安定な勤務就業手当含め要相談
高年収狙い・じっくり転職活動失業保険を継続し慎重に探す
家計の支出が多い再就職手当を活用
副業・起業志向再就職手当は慎重に検討
試用期間後の継続雇用が不透明失業保険の継続受給を検討

判断に迷う場合は、ハローワークや専門家への相談を強くおすすめします。

再就職手当と失業保険、どちらを選ぶべきか?最適な判断基準を解説

再就職手当失業保険は、それぞれに異なるメリットと役割を持つ制度です。特に50代の再就職を考える方にとって、どちらを選ぶべきかは非常に重要な判断ポイントになります。この章では、制度の仕組みを丁寧に解説しながら、ケース別の最適な選択肢について詳しく解説します。

再就職手当と失業保険の違いを正しく理解しよう

制度名支給タイミング支給対象支給内容主な目的
失業保険(基本手当)失業期間中求職中の失業者月々、前職給与の50〜80%相当額を支給生活支援・就職活動の促進
再就職手当早期再就職が決まった後早期再就職した人残りの失業給付日数の60〜70%相当額を一括支給早期の社会復帰支援

失業保険は、失業期間中の生活支援を目的とした制度。一方、再就職手当は「早期の再就職」を促すための制度で、残りの失業給付額の一部をまとめて支給する仕組みです。

こんな人は再就職手当を選ぶべき!おすすめケース

再就職手当の活用が向いているのは、以下のようなケースです。

  • 再就職先が安定した企業・長期雇用が見込める場合
    • 1年以上の雇用が確実であれば、手当を受け取って家計の安定に活用できる
  • 早期に内定が決まり、すぐ働ける状況の人
    • 空白期間を最小限に抑えられる
  • まとまった資金が必要な人(転居・転勤など)
    • 引越し費用や新生活の準備資金として手当を活用できる

再就職手当をもらうことで、スムーズな再スタートが切れるのが最大のメリットです。

じっくり転職活動をしたい人は失業保険継続が安心

一方、次のような方は失業保険の継続受給が向いています。

  • 希望する職種・条件が厳しい、転職活動が長期化しそうな人
  • 職業訓練や資格取得を視野に入れている人
  • 家庭の事情などで、すぐの再就職が難しい場合

失業保険の受給期間中は、ハローワークの職業訓練や支援制度も利用できるため、キャリアアップやスキル取得の時間として活用できます。

判断基準は「収入の安定性」と「ライフプラン」

どちらを選ぶべきか迷った場合は、以下の観点から総合的に判断しましょう。

判断基準ポイント例
収入の安定性再就職先の給与や雇用形態(正社員・契約社員)を確認
再就職先の継続可能性1年以上の雇用見込みがあるか、試用期間後の本採用の可能性などを確認
家計状況貯蓄やローン、家族の生活費を考慮し、まとまった手当が必要か判断
中長期のキャリアプラン今後の働き方・キャリア形成にどちらが有利か検討
高橋
高橋

再就職手当は早期就職を促す魅力的な制度ですが、状況によっては失業保険を継続した方がメリットが大きい場合もあります。特に50代のキャリア後半では、焦って就職するよりも「納得のいく転職」を目指すことが重要です。

再就職手当をもらうための手続き概要

再就職手当を確実に受け取るためには、正しい手順で申請手続きを進めることが重要です。申請ミスや提出漏れがあると、支給対象から外れるリスクがあるため、早めの行動と準備が必要です。

再就職手当申請の流れ

  1. 再就職が決まったら、速やかにハローワークへ報告
    • 内定が決まった段階ではなく、就職日が確定した時点で連絡します。
    • 企業から「採用証明書」の発行を依頼し、準備を進めましょう。
  2. 必要書類の準備
    • 雇用保険受給資格者証
    • 再就職手当支給申請書(ハローワークで配布)
    • 採用証明書(再就職先で作成)
    • 雇用契約書または労働条件通知書(1年以上の雇用見込み確認)
    • 関連事業主に関する証明書(必要な場合)
  3. ハローワークへ提出・申請
    • 再就職日の翌日から1ヶ月以内に申請しなければなりません。
    • 書類不備や期限超過は支給対象外になるため注意しましょう。
  4. ハローワークによる審査・支給決定
    • 書類提出後、ハローワークが支給要件を確認します。
    • 支給が決定すれば、指定口座に振込(目安:1〜2か月後)。

手続きで特に注意したいポイント

項目注意ポイント
申請期限再就職日の翌日から1ヶ月以内厳守
雇用期間の確認1年以上の継続雇用が見込まれる契約か、雇用契約書でしっかり確認
前職・関連企業への再就職元の会社や関連企業(資本・人材関係含む)への再就職は対象外
雇用保険加入の確認雇用保険の被保険者となる勤務条件(週20時間以上、31日以上の契約)を満たすか
迷ったら早めに相談不明点は早めにハローワークへ。事前確認が失敗防止につながる

再就職手当は条件を満たせば数十万円単位のまとまった支給が期待できる制度です。しかし、申請期限や条件を1つでも満たさないと受給できなくなるリスクがあります。特に申請期限「1ヶ月以内」は厳守が必要です。

再就職が決まったら、すぐにハローワークへ連絡し、必要書類の準備を進めましょう。事前に確認・相談することで、スムーズかつ確実な受給につながります。

再就職手当の注意点|利用前に知っておくべきこと

再就職手当をしっかりと受給するためにも、申請の際に注意すべきことも存在します。ここでは、特に注意したいポイントを解説します。

申請タイミングを逃すと受給できない

再就職手当は「再就職した日から1ヶ月以内」に申請する必要があります。この申請期限を過ぎてしまうと、いかなる理由があっても受給できません。

  • 再就職後は仕事で忙しくなり、うっかり申請を忘れてしまうケースが多い
  • 早めに「採用証明書」など必要書類を準備し、ハローワークへ申請しましょう
支給対象外になる就職先の条件がある

以下のような場合は、再就職手当の支給対象外となるため注意が必要です。

支給対象外の例理由
元の勤務先、またはその関連会社に再就職した場合資本・人材の関係があるため対象外
1年未満の雇用契約しか結ばれていない場合長期安定雇用が前提の制度であるため
雇用保険の被保険者にならない働き方(週20時間未満など)雇用保険加入が受給条件のため
再就職後すぐに退職した場合のデメリット

再就職手当を受け取った後に短期間で退職した場合、その後の失業保険や再就職手当の再申請に大きな影響が出ます。再就職手当は一度支給されれば返還義務はありませんが、その後の生活設計が不安定になる可能性があることを理解して置く必要があります。

  • 再就職手当は3年間に一度しか受給できないため、次の転職時には対象外になる可能性が高い
  • 再就職先の早期退職によって再び失業した場合、失業給付の計算が不利になるケースも

再就職先で「試用期間」を経て本採用となる場合も同様です。万が一その期間中に不採用となってしまうリスクも承知した上で、再就職手当の申請を検討しましょう。

失敗しないための事前チェックポイント
チェック項目確認ポイント
申請期限を過ぎていないか再就職から1ヶ月以内に申請
再就職先は1年以上の雇用が見込まれるか契約内容を確認(試用期間後の本採用有無も重要)
前職と資本関係・取引関係はないか関連企業でないことをハローワークに確認
雇用保険の加入条件を満たしているか週20時間以上、31日以上の契約
自身のキャリア設計と再就職手当の相性を考えているか長期的な働き方・方向性を踏まえたうえで受給判断をすること

これらのリスクを十分に把握したうえで、再就職手当を活用することで、後悔のない再スタートにつながります。少しでも不安がある場合は、早めにハローワークや専門家に相談することをおすすめします。

まとめ:再就職手当は正しい知識を基に判断をしよう

再就職手当は再出発を支える心強い制度であり、条件を満たせば数十万円単位の資金を一括でもらえる魅力的な支援策です。ほとんどのケースで受給するほうがメリットがあるでしょう。

しかし、その一方で、

  • 失業保険(基本手当)を重視する場合
  • 就職先を短期で離職する可能性が高い場合
  • 就職先での年収が大きく下がる場合
  • 焦って就職を決めようとしている場合

には、実際に損をしてしまったり、損をしたと感じるケースが生じますので注意が必要です。

以下にポイントをまとめますので、改めてご自身の状況と照らし合わせて、活用を検討してください。

判断ポイント検討内容
就職先の安定性1年以上の雇用見込みがあるか、試用期間後も継続できるか
家計状況住宅ローン・教育費・介護費用など支出が多い場合は活用価値大
キャリア設計無理な転職でキャリアを損なわないか、中長期の視点で検討
副業・起業志向将来の独立を視野に入れるなら申請を慎重に
短期離職リスク早期退職の可能性があるなら、再申請不可リスクを考慮

特に50代は、キャリアの集大成として「収入」「安定性」「家族の生活」「老後資金」など多くの要素を天秤にかけるタイミングです。そのため、目先の一時金に惑わされず、自分の今後の人生設計にとって何が最善か、冷静な判断が求められます。

焦らず、納得できる選択をすることが、今後のキャリアと人生設計の成功につながります。制度を正しく理解し、ぜひ後悔のない判断をしてください。

【50代向け】再就職手当に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 再就職手当はもらった方が得なのですか?

A. 条件によって注意が必要です。
再就職手当は「長期雇用」「安定収入」が見込める再就職先ならメリットがあります。ただし、「短期離職のリスクが高い」「待遇が大きく下がる」「焦って就職先を決めようとしている」場合には、デメリットが発生する場合もあるので、慎重に判断しましょう。

Q2. 再就職手当を受け取った後にすぐ辞めたらどうなりますか?

A. 返金の義務は基本的にありませんが、今後の受給に影響があります。
短期離職しても不正受給でない限り返還義務はありません。ただし、

  • 3年間は再び再就職手当を受け取れない
  • 新たな失業手当の受給資格を満たせない可能性
  • 経済的に苦しくなる などのリスクが生じるため、慎重に考えましょう。
Q3. 再就職手当の支給対象外になるケースを教えてください。

A. 以下の場合は受給できません。

  • 元の勤務先や関連会社に再就職した場合
  • 雇用期間が1年未満と決まっている場合
  • 雇用保険に加入しない働き方(週20時間未満など)
  • 再就職前に内定を得ていた場合 事前にハローワークへ確認することをおすすめします。
Q4. フリーランスや起業でも再就職手当はもらえますか?

A. いいえ、対象外です。
再就職手当は「雇用保険の被保険者になる雇用」が条件のため、フリーランス・起業・業務委託などの独立系の働き方では支給対象外になります。開業支援制度や補助金を活用する選択肢を検討しましょう。

Q5. 再就職手当の申請期限を過ぎたらどうなりますか?

A. 一切受給できなくなります。
再就職手当は「就職した日の翌日から1ヶ月以内」に申請しなければなりません。期限を1日でも過ぎると、理由の如何を問わず受給できなくなるため、早めの申請が鉄則です。

Q6. 再就職先の年収が前職より下がった場合、損しませんか?

A. 条件次第では「就業促進定着手当」で補填される可能性があります。
再就職後6ヶ月以上働けば、前職より賃金が下がった場合でも差額の一部を「就業促進定着手当」として受け取れる制度があります。前職の給与額次第ですが、数万円〜十数万円の補填になる場合もあります。

Q7. 試用期間中に辞めた場合、再就職手当はどうなりますか?

A. 原則返還不要ですが、その後の支援が受けられなくなる恐れがあります。
試用期間中の早期退職でも返還義務は通常ありません。ただし、

  • 3年間は再就職手当を再受給できない
  • 新たな失業給付の受給要件(雇用期間)を満たせない といった問題が生じるため、試用期間後の見込みをよく確認しましょう。
Q8. 再就職手当は課税対象になりますか?

A. いいえ、非課税です。
再就職手当は雇用保険の給付金扱いのため、所得税・住民税の課税対象にはなりません。ただし、再就職後の収入増加により健康保険料や住民税が上がるケースはあります。

Q9. 「就業手当」との違いは何ですか?

A. 就業手当は「1年未満の短期雇用」が対象です。

  • 再就職手当:1年以上の雇用見込みがある場合に支給
  • 就業手当:1年未満の短期契約で就職した場合に支給 条件や支給額が異なります。なお、就業手当は令和7年に廃止となります。
Q10. どんな人が再就職手当をもらった方がいいのですか?

A. 以下の条件がそろう人は積極的に申請しましょう。

  • 1年以上の安定雇用が見込める再就職先が決まっている
  • 住宅ローンや教育費など、家計の固定支出が大きい
  • 早く再スタートしたい、まとまった資金が必要
  • 転職先の年収が前職と同等以上、もしくは改善する

高橋 信也

大手メーカーの人事部で17年以上勤務し、採用や人材配置に従事。50代のキャリア課題に直面する中で、副業としてキャリア相談を開始し、累計500人以上を支援。特に50代の転職・再就職・副業に特化した支援を行い、講座や執筆活動を通じて「50代が輝き続けるためのキャリア戦略」を発信している。

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