「転職で年収アップ」は幻想?50代の早期退職の厳しさと落とし穴【体験談】

50代の早期退職を考える

「50代で転職すれば、年収アップも夢じゃない——」
そう信じて、大手企業を早期退職した田中修一さん(仮名・55歳)のリアルな体験談をお届けします。

役職定年による年収ダウンの危機、住宅ローンや子どもの教育費への不安——。
「このまま会社にしがみつくより、新天地でキャリアを活かしたい」
そう決意した田中さんでしたが、さまざまな「計算違い」によって人生が変わってしまい、焦りと後悔が募る日々を過ごすことに。

田中さんは何を間違えたのでしょうか?
そして、あなたが同じ誤算に陥らないために必要な「早期退職前に知っておくべき現実」と「失敗しないための準備」とは?

「50代で転職すれば年収アップ?」田中さんの誤算と決断の裏側

「今の会社に残っても、年収が下がるだけだ。それなら、もっといい条件で転職したほうがいい」
田中修一さん(仮名・55歳)は、大手自動車部品メーカーで生産管理部長として30年間働いてきました。海外工場との調整や生産計画の策定、コスト管理といったマネジメント業務に携わり、それなりのやりがいを感じていました。
しかし、55歳になったある日、会社から「56歳で役職定年となり、年収が900万円から700万円に減額される」という通知を受け取ります。なんとなく覚悟はしていたものの、いざ現実として突きつけられると、心がざわつきました。
田中さんには、まだ大学生の息子がいます。毎年の学費負担は大きく、住宅ローンもあと10年ほど残っています。これまでの生活を維持しながら、年収700万円でやっていけるのか…不安が募りました。
「このまま会社に残っても、年収が下がるだけでなく、役職定年後は実質的な権限もなくなる。モチベーションを保つのも難しい。だったら、早期退職制度を利用して、より良い条件の転職を目指したほうがいいのでは?」
そう考えた田中さんは、慎重に情報を集めることにしました。しかし、その決断の裏には、大きな誤算が潜んでいたのです。

「転職市場でも十分通用する」と信じていた

田中さんは、自分の市場価値に自信がありました。長年の営業経験とマネジメントの実績があるため、すぐに好条件のオファーがきて再就職できると考えていました。

実際に、転職エージェントに相談すると、「50代でも転職に成功している方はいますよ」と励まされ、希望を持ちました。しかし、後になって分かったのは、その「成功例」はほんの一部のケース。また、転職サイトをのぞいてみると、「50代歓迎」「工場長候補」といった求人があり、「今のうちに動けば、年収800万円くらいで転職できるのでは?」と期待を抱いていました。

早期退職制度を利用することで、通常よりも上乗せされた退職金が支給されるため、多少時間をかけてでもじっくり転職活動をすれば問題ないとも思っていました。
「会社に残れば年収700万円。転職すれば800万円以上。それなら、迷う必要はない」
そう確信し、田中さんは55歳で会社を去ることにしました。しかし、この決断が、後に大きな後悔を生むことになるのです。

「転職は簡単なはず…」50代の現実を突きつけられた田中さんの苦悩

田中さんは決断してすぐに早期退職することを会社に告げました。そして転職エージェントに登録し、求人情報を探し始めたのです。

「50代即戦力採用」の現実

しかし、すぐに想定外の事態に直面しました。エージェントから紹介される求人の多くが、想定していたものよりも条件が低いものばかりだったのです。

これまでのキャリアがあれば、希望条件のオファーがすぐに見つかると信じていました。「退職日までには次の職も見つかっているだろう」と思っていたのです。

ところが、
「これまでの実績を評価してくれる企業が、思ったより少ない…?」
さらに、面接を受けても、企業側の反応は予想以上に厳しいものでした。

  • 「マネジメント経験は豊富ですが、現場の実務はどこまで対応できますか?」
  • 「これまでの営業経験は素晴らしいですが、当社の業界での実績はありますか?」
  • 「50代の採用は慎重にならざるを得ません…」

田中さんは、自分が転職市場で「即戦力」と見なされるには、単なるマネジメント経験だけでは不十分であることを痛感させられることとなります。

求人応募の厳しい現実

転職エージェントからの紹介だけでは思うように決まらないので、自ら求人サイトをチェックして応募を始めました。しかし、書類選考の時点で落ちることが増え、面接にたどり着くまでが想像以上に厳しいことを実感。
「50代の転職が厳しいとは聞いていたけど、これほどまでとは…」
ついに退職の日を迎えてしまい無職の状態に。
田中さんにも焦りが募り始めます。

ただ、まだこの時点では「時間をかければなんとかなる」と信じていました。

「想定外の長期戦…」貯金が底をつく焦りと妥協の転職

退職してから3ヶ月、転職活動を始めてからは5カ月ほどが経過していましたが、田中さんは、希望の条件では転職が決まらない現実に直面していました。

焦り始める田中さん…貯金がどんどん減っていく

「すぐに転職先が決まると思っていた」
そう考えていた田中さんでしたが、書類選考を通過することすら難しく、面接まで進めても最終的に採用に至らないことが続きました。その間、当然ながら収入はゼロ。生活費は貯金を切り崩して賄うしかありません。

  • 住宅ローンの支払いは変わらない
  • 子どもの教育費も必要
  • 生活水準を急に下げることが難しい

⠀「このままではまずい…」
さすがに限界を感じた田中さんは、当初考えていなかった条件の求人にも目を向けるようになりました。
年収500万円の中小企業の営業職に応募することを決めたのです。

  • 役職なしの一般営業職として採用
  • 業界未経験で、一からのスタート
  • これまでとは違い、営業現場を回る仕事が中心
    という、自身の希望とは全く異なるものでした。

そのおかげで転職先は決まったものの、かつてのような裁量はなく、給与も大幅に下がることになりました。
「転職しなければ、まだ年収700万円だったのに…」
早期退職時の決断を振り返り、田中さんは強く後悔することになったのです。

「想像以上の厳しさ…」50代の転職で味わった屈辱と教訓

田中さんは、早期退職後の厳しい現実を経験し、多くのことを学びました。もし過去に戻れるなら、もっと慎重に準備をしたはずだと語ります。では、50代で早期退職を考える人が同じ失敗をしないためには、どのような点に注意すべきでしょうか?

1. 「市場価値を正しく見極める」

  • 大手企業の管理職経験があっても、転職市場では即戦力の実務スキルが重視される。
  • 50代の転職では「マネジメント経験」よりも「専門性」が問われるケースが多い。
  • 「転職すれば年収アップできる」と思い込むのは危険。
    → もっと綿密にリアルな市場価値を確認しておくべきだった。

2. 「生活レベルはすぐに落とせない」

  • 収入が減ったからといって、すぐに生活費を大幅に削るのは難しい。
  • 住宅ローンや車の維持費、保険料など、固定費の見直しには時間がかかる。
  • 「すぐに転職先が見つかる」という前提で動くと、貯金を取り崩すことになる。
    → 失敗を想定した準備が必要。退職前に生活費を見直し、支出を抑える準備をしておくべきだった。

3. 「転職活動は在職中に進めるべき」

  • 会社を辞めてからの転職活動は、精神的にも経済的にもプレッシャーが大きい。
  • 無職の状態で転職先を探すと、条件が下がっても妥協せざるを得なくなる。
  • 在職中なら、落ち着いて求人を選ぶことができる。
    → 「転職先が決まってから退職する」ことが、50代の転職では鉄則だった。

4. 「職種や業界の選択肢を広げる」

  • これまでの経験にこだわりすぎると、応募できる求人が限られる。
  • 異業種への転職や、契約社員・フリーランスといった選択肢も検討すべきだった。
  • 「年収」だけでなく、「働き方の柔軟性」や「将来の安定性」も考慮すべき。
    → 転職活動の幅を広げ、複数のキャリアプランを持つことが重要だった。

5. 「キャリアの専門家に相談する」

  • 自己判断だけで動くと、想定外のリスクに気づけない。
  • 転職市場のリアルな情報や、50代に求められるスキルを知ることが重要。
  • 早めに専門家に相談していれば、もっと良い選択肢があったかもしれない。
    → 転職をさせて報酬を得るエージェントは当然転職をすすめてくる。退職前にもっと客観的にキャリアを考えてくれる相手に相談し、長期的なキャリア戦略を立てるべきだった。

「50代で早期退職を考える前に!」失敗しないための丁寧な選択を

田中さんは、早期退職後の厳しい現実を経験し、「もっと慎重に考えるべきだった」と何度も後悔しました。しかし、一方で「今からでも軌道修正できる」とも考えています。
「50代のキャリアは終わりではない。むしろ、これからどう生きるかが大事なんだ」
確かに、50代の転職は簡単ではありません。しかし、正しい準備をすれば、より良い選択ができるはずです。

50代のキャリア選択で大切なこと

  • 「なんとなく」ではなく、しっかりと計画を立てる
  • 市場価値を客観的に見極める
  • 転職活動は在職中に進めるのが鉄則
  • 生活費の見直しをし、収入ダウンにも備える
  • 独立や副業も視野に入れ、多様な選択肢を持つ

⠀田中さんの経験から学べることは多くあります。あなたが今、早期退職や転職を考えているなら、「本当に今辞めるべきか?」「今の自分にどんな選択肢があるのか?」をじっくりと考えてみてください。

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