なぜ50代は採用されにくいのか?その理由7選!企業の本音を徹底分析

50代の再就職・転職

50代の転職が厳しい——そんな話をよく耳にしますよね。
実際、50代を超えると求人数が激減するのは事実です。「もう若くないから当たり前…」本当にそうでしょうか。そして、「年齢のせいだから仕方がない」と本当に割り切れって良いのでしょうか?

今回は、200社の人事担当者・経営者にヒアリングを実施し、企業が50代の採用をためらう“本当の理由”を調査しました。

企業側の視点から考えると、そこには単なる“年齢の問題”だけではなく、さまざまな要因が絡んでいます。給与コスト、スキルの適応力、組織との相性、ポジションの有無、さらには企業文化やライフステージの違い——さまざまな要素が絡み合っています。

高橋
高橋

きちんと理由を把握しておくことで対策も立てやすくなります。この記事では、調査結果をもとにより深くまで「企業側の視点」を掘り下げていきます。

本記事では、採用の最前線にいる企業の本音を徹底分析し、50代の転職市場のリアルを明らかにします。企業側の本当の課題を知ることで、今後のキャリアをどう戦略的に築いていくべきか、そのヒントが見えてくるはずです。

  1. 50代はコストがかかる?企業にとって本当に重いのか?
    1. 企業が懸念する「給与・退職金・社会保険料」の実態
    2. 年功序列の崩壊と「50代の給料問題」
  2. 「スキルについていけない?」:企業の“50代=変化に弱い”イメージ
    1. 「最新スキルを学ぶ意欲」に対する企業の疑念
    2. 「変化についていけない」は本当か?データが示す50代の実態
    3. 企業の「50代=変化に弱い」イメージが生まれる背景
  3. 「組織に馴染めない?」:50代が直面する人間関係と企業文化の壁
    1. 「年下上司のもとで働けるのか?」という企業の不安
    2. 若手中心の企業文化と50代のギャップ
    3. 「50代=柔軟性がない」という先入観が採用を阻む
  4. 「ポジションのミスマッチ」:50代に合う役割がない?
    1. 「管理職か専門職か?」50代に求められるポジションの課題
    2. 「現場に戻れるのか?」50代のキャリア観と企業の期待のズレ
    3. 「新たなポジションの創出」は現実的ではない
  5. 「ライフステージや健康リスク」:50代は長く働けるのか?
    1. 50代に対する「健康リスク」の先入観
    2. 「介護や家庭の事情で辞めるのでは?」という不安
    3. 企業が50代の長期雇用をためらう理由
  6. 「企業文化や市場環境の変化」:50代が採用されにくい外部要因
    1. 若手主体の企業文化と50代の求職者
    2. 業界ごとの人材ニーズの変化
    3. 「企業ブランディング」としての採用戦略の変化
  7. 「採用側の心理的ハードル」:50代を迎え入れることへの企業の不安
    1. 「職場の雰囲気に合うのか?」という懸念
    2. 「すぐに辞めてしまうのでは?」という不安
    3. 「変化に適応できるのか?」という疑念
    4. 企業が抱く「採用コストとリスク」の問題
  8. まとめ:50代の採用が進まない理由と転職市場の現実
    1. 50代の転職市場の現実

50代はコストがかかる?企業にとって本当に重いのか?

50代の採用をためらう理由として、企業が真っ先に挙げるのが「コスト」の問題です。「50代の給与は高すぎる」と言われることも少なくありませんが、これは本当に事実なのでしょうか?また、企業側のコスト負担とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

企業が懸念する「給与・退職金・社会保険料」の実態

多くの企業が50代の採用に慎重になる理由の一つが、人件費の高さです。具体的に、企業が負担するコストには以下のようなものがあります。

  • 給与の水準:50代の求職者は、これまでのキャリアや経験に基づいた給与を希望するケースが多く、企業としては「高額な給与を支払うだけのメリットがあるのか?」と考えざるを得ません。
  • 社会保険料:給与が高くなれば、当然企業が負担する社会保険料も増加します。
  • 退職金制度:企業によっては、定年までの期間が短いために退職金の支払いが重くのしかかるケースもあります。
  • 福利厚生費:管理職経験者を迎える場合、それに見合った福利厚生を提供しなければならず、コスト負担が増加します。

⠀このように、企業が50代の採用に慎重になる背景には、単なる給与の問題だけでなく、長期的なコスト負担の見通しも影響しているのです。

年功序列の崩壊と「50代の給料問題」

かつての日本企業では、年功序列の給与体系が一般的でした。しかし、近年は成果主義が導入され、年齢に関係なく「企業にどれだけ貢献できるか」が評価の基準になりつつあります。これは50代の求職者にとっては大きな課題となります。

  • 「経験に見合う給与が支払われないなら、転職しない」という50代求職者の考えと、
  • 「スキルがあっても、若手と同じ給与水準でないと採用できない」という企業側の事情が、
    ミスマッチを引き起こしているのです。

このような状況では、企業側は「高額な給与を支払うリスクを取るくらいなら、ポテンシャルのある若手を育てたほうが得策」と判断するケースが多くなります。実際、今回の調査でも「同じスキルなら若手を優先して採用する」という意見が圧倒的多数を占めました。

では、この「コスト問題」は絶対的なものなのでしょうか?次は企業が50代のスキルや適応力についてどう考えているのかを掘り下げていきます。

「スキルについていけない?」:企業の“50代=変化に弱い”イメージ

50代の転職が難しい理由の一つとして、企業側が懸念するのが「スキルや適応力」の問題です。「50代の人は変化についていけないのでは?」という固定観念が根強く、採用をためらう要因となっています。

高橋
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前章でお伝えしたように、「ベテラン社員はコストが高い」と思われがちです。これは単に給与が高額だからというだけではありません。スキルの適応力や即戦力としての期待値に対して、企業が「費用対効果が見合わないだろう」と判断しているケースが多いのです。

では、本当に50代は最新の技術や働き方に対応できないのでしょうか?企業側の視点と、実際のデータをもとに検証していきます。

「最新スキルを学ぶ意欲」に対する企業の疑念

200社の人事担当者・経営者にヒアリングを行った結果、以下のような声が多く聞かれました。

  • 「新しいシステムやツールに慣れるのに時間がかかるのではないか」
  • 「過去の成功体験にこだわり、柔軟な対応が難しいのでは?」
  • 「若手と比べて、デジタル技術のキャッチアップに差がある」

特にITやデジタルの進化が激しい業界では、50代の転職希望者に対する“適応力”への疑念が強い傾向があります。例えば、新しいプロジェクト管理ツールやクラウド技術を日常的に使う環境では、「50代がどこまでスムーズに対応できるのか」が採用判断の大きなポイントになっています。

「変化についていけない」は本当か?データが示す50代の実態

しかし、「50代が変化に対応できない」という見方には偏りもあります。実際の調査データを見ると、以下のような事実も浮かび上がっています。

  • 50代の約14%が独学で新しいスキルを習得しているパーソル総合研究所の調査データより)
  • オンライン研修やリスキリングプログラムの利用率は年々増加
  • 企業内での50代のリーダー層は、技術よりも経験を活かしたマネジメント力で貢献している

特に、管理職やリーダー経験のある50代は「技術力」ではなく「プロジェクト全体のマネジメント力」や「意思決定スキル」を評価されることが多く、単純にデジタルスキルの習得だけが求められるわけではありません。

企業の「50代=変化に弱い」イメージが生まれる背景

では、なぜ企業は50代のスキルに対して厳しい見方をするのでしょうか?

  • 過去の事例に基づいた固定観念:過去に採用した50代の社員が新しいシステムに苦戦した事例があると、「50代は適応力が低い」という印象が定着しやすい。
  • 若手と比較される環境:特にIT・デジタル分野では、20~30代の若手が新しいツールを即座に使いこなすことが多く、相対的に50代の習得スピードが遅く見える。
  • 企業文化の変化:リモートワークやフレックス制度など、働き方自体が大きく変化する中で、過去の企業文化に慣れた50代が新しいスタイルに馴染めるのか、不安視されることがある。

これらの理由が積み重なり、50代の求職者は「変化に対応できないのでは?」という偏見を持たれやすくなっています。

「組織に馴染めない?」:50代が直面する人間関係と企業文化の壁

50代の転職が難しい理由の一つに、企業側が懸念する「組織との適応性」があります。特に、年下の上司や若手中心の職場に馴染めるのか、人間関係の面で問題が生じないかといった点が、採用の判断材料になることが少なくありません。

では、企業は50代の求職者に対して、具体的にどのような懸念を抱いているのでしょうか?人事担当者・経営者200社へのヒアリングをもとに、その実態を詳しく見ていきます。

「年下上司のもとで働けるのか?」という企業の不安

近年、多くの企業で若手の管理職登用が進んでおり、30代や40代の上司のもとで50代の社員が働くケースが増えています。しかし、企業側からは以下のような不安の声が聞かれます。

  • 「年下の上司に指示されることを受け入れられるのか?」
  • 「これまでのやり方を変えようとしないのでは?」
  • 「自分の経験を過信して、周囲と対立しないか?」

特に、「自分のほうが経験があるのに、なぜこの人の指示に従わなければならないのか?」という意識が強いと、企業側は「職場の雰囲気を乱すのではないか」と懸念を抱きます。

若手中心の企業文化と50代のギャップ

また、企業の文化そのものが若手中心に構築されているケースも多く、50代の求職者が適応できるのか疑問視されることがあります。

  • スピード感の違い:スタートアップや成長企業では、意思決定のスピードが求められるが、50代は慎重な判断を好む傾向がある。
  • コミュニケーションスタイルの違い:チャットツールやオンライン会議を多用する企業では、対面重視の50代との間でズレが生じる可能性がある。
  • 価値観の違い:「昔ながらのやり方」にこだわる50代に対し、「新しい方法を試したい」若手との間で意見の衝突が起こりやすい。

企業側がこれらのギャップを懸念する背景には、「組織の一体感を損ないたくない」という本音があります。そのため、「50代を採用しても職場の雰囲気になじめないのではないか?」という疑問が、採用の障壁となるのです。

「50代=柔軟性がない」という先入観が採用を阻む

50代の求職者が企業文化に馴染めないのではないかという不安は、ある種の“先入観”による部分も大きいと言えます。

  • 「50代は変化を嫌う」という固定観念:実際には、新しい環境に順応する50代も多いが、一部の「変化を拒む50代」の印象が強く残っている。
  • 過去の採用失敗の影響:企業側が過去に50代を採用し、組織と合わなかった経験があると、「また同じことが起こるのでは」と慎重になる。
  • 「若手主体の企業に50代は合わない」という決めつけ:特にベンチャー企業やIT企業では、「50代はスピードについてこられない」との先入観が根付いている。

このような背景から、50代の求職者は「本当に組織にフィットするのか?」という点で疑問を持たれ、採用が見送られるケースが少なくありません。

「ポジションのミスマッチ」:50代に合う役割がない?

50代の転職が難しい理由の一つに、「ポジションのミスマッチ」があります。企業が50代を採用しないのは、単に年齢の問題ではなく、企業内に適した役割がないという事情が関係しています。では、どのようなケースで「ポジションが見つからない」と判断されてしまうのでしょうか?

「管理職か専門職か?」50代に求められるポジションの課題

50代の求職者の多くは、過去に管理職を経験していることが多く、転職先でもその経験を活かせるポジションを希望します。しかし、企業側は以下のような理由で採用をためらいます。

  • 「すでに管理職が埋まっている」:企業は限られた管理職ポストしか用意しておらず、新たに外部から50代を迎える余地がない。
  • 「管理職として採用するなら給与が高すぎる」:企業の人件費圧縮の方針と合わず、若手管理職を育成する方がコストメリットがあると判断される。
  • 「専門職として採用するには経験がマッチしない」:50代のスキルが特定の職種や最新の技術とズレていると、専門職としても採用しにくい。

このように、50代は「管理職としても専門職としても適したポジションがない」と判断されがちです。

「現場に戻れるのか?」50代のキャリア観と企業の期待のズレ

企業の多くは「管理職ポストは埋まっているが、現場での専門職なら採用できる」という考えを持っています。しかし、50代の求職者の中には「これまでの経験を活かしたい」「今さら現場に戻りたくない」と考える人も少なくありません。
企業側が抱く疑問として、

  • 「これまでマネジメント中心だった人が、現場のプレイヤーに戻れるのか?」
  • 「長年のキャリアを捨てて、現場で働くことに抵抗がないのか?」
  • 「求職者が本当に現場の仕事を希望しているのか、それとも仕方なく応募しているのか?」

といった懸念があります。

結果として、企業は「50代が現場で本当に活躍できるのか疑問だ」と判断し、採用を見送るケースが増えています。

「新たなポジションの創出」は現実的ではない

一部の企業では、50代を迎え入れるために新たなポジションを設ける動きもありますが、これはごく限られたケースです。多くの企業は、「50代のためにわざわざポストを作る」ほどの余裕はなく、以下のような事情からポジションの創出に消極的です。

  • 「既存社員とのバランスを崩したくない」:新しい役職を作ると、社内の若手や中堅層からの反発が生じる可能性がある。
  • 「コストをかけてまで採用する必要性がない」:50代の経験やスキルが企業の現状と合致しない場合、無理にポジションを作る意義が薄れる。
  • 「企業の成長フェーズと合わない」:特にベンチャー企業や成長段階の企業では、即戦力となる若手を優先する傾向が強い。

こうした背景から、企業は50代に適したポジションが見つからないと判断し、結果として採用を見送るケースが多くなるのです。

「ライフステージや健康リスク」:50代は長く働けるのか?

50代の転職が難しい理由の一つとして、企業が懸念する「ライフステージや健康リスク」があります。企業側は、50代の求職者を採用する際に「健康問題で早期退職しないか?」「家庭の事情で仕事を続けられなくなるのでは?」といった不安を抱えています。
では、具体的にどのような懸念があるのでしょうか?200社の人事担当者・経営者へのヒアリングをもとに、その実態を掘り下げていきます。

50代に対する「健康リスク」の先入観

企業が50代の採用をためらう大きな理由の一つが、健康リスクです。特に以下のような懸念が挙げられます。

  • 「50代は病気のリスクが高いのでは?」:生活習慣病や慢性的な健康問題を抱えている可能性が高く、長期的に働き続けられるか不安。
  • 「体力的に厳しい業務に耐えられるのか?」:特に肉体労働やシフト勤務が必要な職場では、50代の体力面が懸念される。
  • 「急な病気や入院による欠員リスクが高い」:特に中小企業では、少人数で業務を回しているため、一人でも欠けると業務が回らなくなる。

⠀こうした健康に関するリスクは、年齢に関係なく発生するものですが、企業側は「50代=健康リスクが高い」と判断しやすい傾向があります。

「介護や家庭の事情で辞めるのでは?」という不安

50代の求職者に対するもう一つの大きな懸念が、家庭の事情による離職リスクです。

  • 「親の介護で仕事を辞めるのでは?」:50代は親の介護問題が発生しやすい世代であり、突然の休職や離職が懸念される。
  • 「家庭の都合でフルタイム勤務が難しくなるのでは?」:特に介護や家庭の事情がある場合、フレキシブルな働き方を求められる可能性があり、企業側は対応に悩む。
  • 「仕事より家庭を優先しがちでは?」:特にワークライフバランスを重視する50代求職者が増えており、企業側は「フルコミットできるのか?」と疑問を持つ。

⠀企業としては「採用しても長く働いてくれないかもしれない」という懸念を抱えており、結果として50代の採用を慎重に考えることになります。

企業が50代の長期雇用をためらう理由

企業は基本的に「長く働いてくれる人材」を求めています。しかし、50代の場合、以下の理由から「長期雇用が難しいのでは?」と判断されるケースが多いです。

  • 「定年までの期間が短い」:企業が育成やキャリアパスを考えたとき、50代は定年までの時間が限られているため、長期的な戦力として見られにくい。
  • 「60代まで働く前提で雇っていいのか?」:定年延長が進む中で、50代を採用しても60代まで活躍できるのかという点が判断基準になる。
  • 「社内の昇進ルートが詰まる」:50代を採用すると、社内の若手や中堅社員のキャリアパスに影響を及ぼす可能性がある。

⠀これらの要因が重なり、「50代の採用はリスクが高い」と考える企業が多いのが現実です。
次の章では、さらに「企業文化や市場環境の変化」が50代の採用にどのような影響を与えているのかを掘り下げていきます。

「企業文化や市場環境の変化」:50代が採用されにくい外部要因

50代の転職が難しい理由には、企業内部の問題だけでなく、企業文化や市場環境の変化といった外部要因も大きく関係しています。近年、多くの企業が採用戦略を見直し、求める人材の基準を変えつつありますが、50代にとっては不利に働くケースが目立ちます。
では、企業文化や市場の変化が50代の採用にどのような影響を与えているのかを見ていきましょう。

若手主体の企業文化と50代の求職者

近年、多くの企業が「若手主体」の文化を重視する傾向にあります。特に、スタートアップ企業や急成長中の企業では、以下のような要因から50代の採用が難しくなっています。

  • 「企業の成長スピードに適応できるか?」:若い組織ではスピーディーな意思決定や柔軟な働き方が求められるが、50代は慎重なアプローチを取る傾向がある。
  • 「チームの一体感を重視」:平均年齢が30代前半の企業では、世代間ギャップによるコミュニケーションのズレが懸念される。
  • 「新しい働き方への適応力」:リモートワークやフラットな組織構造に馴染めるかどうかが、企業側の採用基準になっている。

⠀このような文化の違いから、50代の求職者は「企業の雰囲気に合わないのではないか」と判断され、採用のハードルが高くなっています。

業界ごとの人材ニーズの変化

市場環境の変化により、求められる人材の特徴も大きく変わってきています。特に、以下の業界では50代の採用が厳しくなっています。

  • IT・デジタル分野:最新技術の習得が求められ、50代よりも若手のエンジニアが優先されがち。
  • 広告・メディア業界:トレンドの変化が激しく、デジタルマーケティングのスキルが必須となり、若手の活躍が目立つ。
  • スタートアップ企業:スピード感と柔軟な発想が求められ、若手主導の組織運営が主流。

⠀一方で、製造業や専門職(士業、医療など)の分野では、経験が評価されることもありますが、限られたポジションしか存在しないため競争が激しくなっています。

「企業ブランディング」としての採用戦略の変化

企業が採用する人材は、単に業務能力だけでなく、企業のブランディング戦略にも影響を与えます。

  • 「若い企業イメージを維持したい」:特にBtoC向けのブランド企業では、ターゲット層と年齢が近い人材を採用し、若々しいイメージを保とうとする。
  • 「ダイバーシティ推進の中で50代の優先度が低い」:多様性を重視する企業では、若手・女性・外国人の採用に重点を置き、50代の採用枠が縮小している。
  • 「リストラ後の再構築」:リストラや早期退職制度を導入した企業では、再び50代を採用することに慎重になる。

⠀このように、企業の採用戦略自体が50代の採用を後回しにする要因となっているのです。
次の章では、「50代の採用を阻む最後の要因」である、「採用側の心理的ハードル」について詳しく掘り下げていきます。

「採用側の心理的ハードル」:50代を迎え入れることへの企業の不安

50代の採用が難しい理由には、企業側の心理的なハードルが大きく関係しています。スキルや経験があっても、「50代を採用することで生じるかもしれない問題」を企業は過剰に心配し、結果として採用を見送るケースが多いのです。
では、企業が50代の採用をためらう心理的な要因には、どのようなものがあるのでしょうか?

「職場の雰囲気に合うのか?」という懸念

企業が50代の採用をためらう要因の一つが、職場の雰囲気や人間関係への影響です。

  • 「年齢差が大きいとコミュニケーションが難しくなるのでは?」
  • 「若手社員が50代の新入社員とどう接していいかわからないのでは?」
  • 「これまでのやり方を押し付けて、組織の柔軟性が損なわれるのでは?」

⠀特に若手中心の企業では、こうした懸念から50代の採用に慎重にならざるを得ません。

「すぐに辞めてしまうのでは?」という不安

企業は採用した人材に長く働いてほしいと考えています。しかし、50代の求職者に対しては以下のような懸念が生じます。

  • 「環境の変化に適応できず、短期間で退職するのでは?」
  • 「年齢的に転職のラストチャンスという意識が強く、思っていた職場と違えばすぐ辞めるのでは?」
  • 「健康面の不安から、定年を待たずに退職するのでは?」

⠀企業はこうしたリスクを考慮し、「だったら若手を採用したほうが安心だ」と判断することが多いのです。

「変化に適応できるのか?」という疑念

現在の企業は、急速に変化する市場環境に適応しながら成長を続けなければなりません。そのため、企業は変化に柔軟に対応できる人材を求める傾向が強く、50代に対しては以下のような不安を抱きがちです。

  • 「新しいシステムやツールに馴染めるのか?」
  • 「変化の激しい環境で、新しいことを積極的に学び続けられるのか?」
  • 「これまでの経験を重視しすぎて、新しいやり方を受け入れないのでは?」

⠀特に、IT業界やスタートアップ企業では、「50代は変化に適応しづらいのではないか?」という先入観が採用の障壁になっています。

企業が抱く「採用コストとリスク」の問題

企業が50代の採用をためらう心理的ハードルには、コストとリスクの問題もあります。

  • 「50代を採用するには相応の給与が必要になるが、それに見合ったリターンがあるのか?」
  • 「50代の採用が社内の賃金バランスを崩すのでは?」
  • 「採用後のミスマッチが生じた場合、企業側に大きな負担がかかるのでは?」

⠀こうしたリスクを避けるために、企業は無難な選択として「若手の採用」を優先するのです。

企業側が抱えるこうした心理的ハードルは、50代の転職市場を厳しくする大きな要因となっています。

まとめ:50代の採用が進まない理由と転職市場の現実

ここまで見てきたように、50代の転職市場が厳しいのは単純な「年齢の問題」ではなく、さまざまな要因が絡み合っています。企業側の視点を整理すると、主に以下の理由が50代の採用を阻む要因となっています。

コストの問題
  • 50代は給与水準が高く、企業の人件費圧縮の方針と合わない。
  • 社会保険料や退職金負担が企業の財務面でネックになる。
  • 若手を採用し育成したほうが長期的なメリットがあると判断されやすい。
スキルや適応力に対する懸念
  • ITやデジタル技術の変化に適応できるか不安視される。
  • 新しい働き方(リモートワーク・フレックス制度)に対応できるか疑問視される。
  • 「過去の成功体験に固執し、新しいやり方を受け入れないのでは?」という先入観がある。
組織への適応の難しさ
  • 若手中心の職場に馴染めるのか、人間関係の摩擦が生じるのではと懸念される。
  • 年下上司のもとで素直に働けるか、過去の経験を過信しすぎないかが問題視される。
  • 企業文化が若手中心であり、50代の採用に積極的でない企業が多い。
適したポジションがない
  • 50代の管理職枠がすでに埋まっており、新たなポジションが用意されていない。
  • 現場のプレイヤーとして働くには求職者側の意識やスキルがマッチしないケースがある。
  • 企業側が50代向けのポジションを新設するほどの余裕がない。
ライフステージや健康リスク
  • 50代は健康問題や介護など、仕事を続けられないリスクがあると見なされる。
  • 突然の病気や家族の事情で離職する可能性を懸念される。
  • 企業は長期雇用を前提とした採用をしたいが、50代ではその保証が難しい。
企業文化や市場環境の変化
  • 若手主体の企業文化では50代の採用が敬遠されがち。
  • IT・広告・スタートアップなどの業界では、変化に柔軟な若手が優先される。
  • 企業のブランディング戦略の中で、50代の採用が優先事項にならないことが多い。
採用側の心理的ハードル
  • 「50代の新入社員は扱いにくいのでは?」という漠然とした不安。
  • 「すぐに辞めるのでは?」という疑念。
  • 「変化についていけないのでは?」という先入観。

50代の転職市場の現実

現在の日本では、労働力不足が叫ばれていますが、50代の採用は決して活発とは言えません。それは、企業が50代の採用に伴うリスクを大きく見積もっているからです。

一方で、企業が50代を採用しないことで、人材のミスマッチや経験不足の課題も生じています。多くの50代が持つスキルや知見は、本来なら企業にとって大きな資産となるはずです。しかし、それを適切に活かせる仕組みが整っていないため、50代の転職市場は厳しい状況が続いているのです。

日本の雇用環境が今後どのように変化するかは不透明ですが、50代の求職者にとっては、「企業が何を懸念しているのか」を正しく理解することが、転職活動を進めるうえでの大きなヒントになります。

この現実を踏まえ、50代の求職者は「なぜ採用されにくいのか?」という問いに対する答えを知り、戦略的にキャリアを考えることが求められています。

高橋 信也

大手メーカーの人事部で17年以上勤務し、採用や人材配置に従事。50代のキャリア課題に直面する中で、副業としてキャリア相談を開始し、累計500人以上を支援。特に50代の転職・再就職・副業に特化した支援を行い、講座や執筆活動を通じて「50代が輝き続けるためのキャリア戦略」を発信している。

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